支店オフィスの移転計画を進める中で「登記手続きはどうすればいいのだろう」と悩まれていませんか?
支店の移転は、業務拡大や効率化のために重要ですが、その際に忘れてはならないのが法的手続きとしての「移転登記」です。
登記手続きには期限があり、遅れると罰則の対象になりかねません。
本記事では、支店オフィスの移転時に必要な登記手続きの流れから必要書類、スムーズに進めるためのポイントまで、実務に即して解説します。
移転計画をスムーズに進め、新たな拠点での事業展開を成功させるための参考にしていただければ幸いです。
支店オフィスの移転時には登記手続きが必要

支店オフィスを移転する際には、必ず「移転登記」という法的手続きが必要になります。
単なる事務手続きではなく、会社法で定められた義務です。
支店とは、本店とは別に独自の裁量を持って営業活動ができる拠点を指します。
商法上では「ある範囲において会社の営業活動の中心となり、本店から離れ独自に営業活動を決定し、対外的取引をなしえる人的物的組織」と定義されています。
このような重要な拠点の所在地情報は、取引先や顧客が確認できるよう公的に記録されている必要があるため、移転した場合には登記が必要です。
注意すべきは、支店移転の登記申請には期限があることです。
移転日から2週間以内に申請を完了しなければなりません。
この期限を過ぎると「登記懈怠(とうきけたい)」として100万円以下の過料に処される可能性があります。
移転計画を立てる際には、この登記手続きの期限も考慮することが重要です。
支店オフィスの移転登記の流れ【3ステップ】

支店オフィスの移転登記は、以下の3ステップで進めていきます。
- 社内手続きを完了させる
- 法務局へ移転登記の申請を行う
- 登記完了にともなう関連手続きを行う
それでは、各ステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ1.社内手続きを完了させる
最初のステップは、社内での正式な承認手続きを完了させることです。
支店の移転には、取締役会での決議が必要になります。
取締役会を設置していない会社の場合は、取締役の過半数の賛成による決定が必要です。
この決議では、移転する支店の名称、現在の所在地、新しい所在地、そして移転日を明確に決定します。
決議内容は議事録として記録し、後の登記申請の際の添付書類にしなければなりません。
なお、支店の移転は株主総会の決議事項ではありません。
会社法第362条第4項第4号により、取締役会設置会社では支店に関する決定は取締役会の専権事項とされているためです。
この点は多くの企業担当者が混同しやすいポイントですので注意しましょう。
ステップ2.法務局へ移転登記の申請を行う
社内手続きが完了したら、次は実際に法務局への登記申請を行います。
申請先は本店所在地を管轄する法務局です。
2022年9月1日以降は制度が変更され、支店所在地の法務局への申請は不要になりました。
申請方法には、窓口での申請とオンラインでの申請があります。
窓口申請は、必要書類をそろえて法務局窓口に行くことで、手続きが可能です。
オンライン申請の場合は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。
申請の際には、登録免許税として支店1か所につき3万円が必要です。
なお、支払いは収入印紙または電子納付で行います。
申請から登記完了までは通常1〜2週間程度かかりますので、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。
ステップ3.登記完了にともなう関連手続きを行う
登記が完了したら、関連する各種手続きも忘れずに行いましょう。
まず税務関係では、管轄の税務署に「異動届出書」を提出します。
法人税や消費税などの納税地の変更手続きが必要です。
社会保険関係では年金事務所や健康保険組合に住所変更の届出を行います。
銀行などの金融機関にも支店住所の変更を届け出る必要があるでしょう。
さらに、取引先や顧客に対しても支店移転の挨拶状を送付するなど、ビジネス上の配慮も大切です。
重要な取引先には直接訪問して挨拶するとより良い関係維持につながるでしょう。
この関連手続きをすべて行い、支店移転のプロセスは完了です。
支店オフィスの移転登記に必要な書類

支店オフィスの移転登記に必要な書類は、管轄税務署が変わるかどうかで異なります。
それぞれのケースに応じた必要書類を確認しておきましょう。
(1)管轄税務署が変わらない場合
管轄税務署が変わらない場合、つまり同一管轄内での移転の場合には、比較的シンプルな書類で手続きが行えます。
必要な書類は以下のとおりです。
- 登記申請書(支店移転登記用)
- 取締役会議事録または取締役決定書
- 委任状(司法書士などの代理人に依頼する場合)
- 登録免許税納付用台紙(収入印紙を貼付)
登記申請書には、会社の商号、本店所在地、代表者の氏名、移転する支店の名称、現在の所在地、新しい所在地、移転日などを記載します。
法務局のWebサイトから様式をダウンロードできますので、記載例を参考に作成すると良いでしょう。
会社の代表者印や実印が必要になる場合もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
(2)管轄税務署が変わる場合
管轄税務署が変わる場合、つまり異なる管轄への移転の場合には、必要書類が増えます。
本店所在地の法務局に一括して申請することになりますが、旧支店所在地と新支店所在地の両方に関する書類が必要です。
【必要書類】
- 登記申請書(本支店一括登記申請用)
- 取締役会議事録または取締役決定書
- 委任状(司法書士などの代理人に依頼する場合)
- 登録免許税納付用台紙(収入印紙を貼付)
- 登記手数料納付用台紙(支店所在地の法務局ごとに300円)
登録免許税は本店所在地分が3万円、旧・新支店所在地分がそれぞれ9,000円となります。
支店所在地の法務局ごとに登記手数料300円が必要です。
例えば、本店(管轄A)と管轄の異なる支店(管轄B)を別の管轄(管轄C)に移転する場合、合計48,600円(本店分30,000円+支店B分9,000円+支店C分9,000円+手数料B分300円+手数料C分300円)の納付が必要になります。
支店の移転登記をスムーズに進める4つのポイント

支店の移転登記をスムーズに進めるためには、以下4つのポイントを押さえましょう。
- 移転日から登記完了までの計画を立てる
- 必要書類を事前に把握する
- 管轄税務署が変わる場合の対応を理解しておく
- 関連手続きも忘れずに行う
それぞれ詳しく解説します。
ポイント1.移転日から登記完了までの計画を立てる
1つ目のポイントは、全体のスケジュール管理です。
支店移転の効力発生日から2週間以内に登記申請を完了させる必要があるため、逆算して準備を進めましょう。
多くの企業担当者は、移転の物理的な準備だけに気を取られがちですが、法的手続きの期限も忘れてはなりません。
年度末や年度始めなど、業務が集中する時期の移転はとくに注意しましょう。
例えば、4月1日に支店を移転する場合、4月15日までに登記申請を完了させる必要があります。
そのためには、3月中に取締役会決議を済ませ、必要書類を準備しておくといった計画が必要です。
余裕を持ったスケジュール設定が、スムーズな移転登記の鍵となります。
ポイント2.必要書類を事前に把握する
2つ目のポイントは、必要書類を事前に把握しておくことです。
書類の不備があると、申請が受理されず再提出が必要になり、期限内に登記を完了できないリスクが生じます。
とくに、取締役会議事録は記載内容に不備があると受理されないことがあるため要注意です。
移転する支店の名称、現在の所在地、新しい所在地、移転日などが明確に記載されているか確認しましょう。
また、登録免許税の納付も忘れてはなりません。
支店1か所につき3万円の登録免許税が必要で、管轄が変わる場合は追加の費用も発生します。
事前に収入印紙を購入しておくか、電子納付の準備をしておきましょう。
書類の準備に不安がある場合は、司法書士などの専門家に相談・依頼することも1つの選択肢です。
専門家のサポートを受けることで、スムーズな手続きが行えるでしょう。
ポイント3.管轄税務署が変わる場合の対応を理解しておく
3つ目のポイントは、管轄税務署が変わる場合の対応を理解しておくことです。
管轄が変わると、手続きが複雑になり、必要書類や費用も増加します。
例えば、東京都千代田区から大阪市中央区へ支店を移転する場合、管轄法務局が東京法務局から大阪法務局に変わります。
この場合、本店所在地の法務局に一括申請することになりますが、両方の法務局に関する書類と費用が必要です。
税務関係の手続きも旧管轄の税務署には異動届を、新管轄の税務署には開設届を提出するといった具合に複雑になります。
この手続きを漏れなく行うためには、チェックリストを作成するなどの工夫が有効です。
管轄変更を伴う移転は、手続き漏れや遅延を防ぐために専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。
ポイント4.関連手続きも忘れずに行う
ポイントの4つ目は、登記以外の関連手続きも忘れずに行うことです。
登記だけで移転手続きが完了したと思い込み、他の必要な手続きを怠ってしまうケースが少なくありません。
税務関係では法人税・消費税・法人住民税・法人事業税などの異動届が必要です。
社会保険関係では、年金事務所や健康保険組合への届出も必要になります。
銀行口座の住所変更、電話やインターネット回線の移転手続き、郵便物の転送手続きなども忘れてはなりません。
この手続きを怠ると、重要な通知や書類が届かないなどのトラブルにつながります。
移転に関連する手続きは多岐にわたるため、担当者を決めて漏れなく進めることが重要です。
チェックリストを作成し、進捗状況を管理しましょう。
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まとめ
支店オフィスの移転時には、移転登記という法的手続きが必要です。
手続きは移転日から2週間以内に完了させる必要があり、期限を過ぎると過料のリスクがあります。
スムーズに移転登記を進めるためには、全体のスケジュールを計画し、必要書類を事前に把握し、管轄変更の場合の対応を理解し、関連手続きも忘れずに行うことがポイントです。
新たな拠点での事業展開をスムーズに始められるよう、手続きを計画的に進めていきましょう。
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